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e-Japan戦略 第二期:電子文書法(e-文書法)に見る施策実現への道のり その2

IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)に基づき内閣に設置されたIT戦略本部、その第22回会合(2003年12月18日)において、e-Japan戦略U加速化パッケージ(素案)の説明があり、その席で初めて、「e-文書イニシアティブ」という、最終的には電子文書法(e-文書法)に行き着く新たな標語が披露されました。
そして、翌年の第23回会合(2004年2月6日)において、そのスケジュールを含め、e-文書イニシアティブの全貌が明らかになりました。

【凡例】
・:IT戦略本部 会合
●:IT戦略本部 決定内容
☆:法令(国会、官房、官報)
◇:その他

・2004年 2月 6日:IT戦略本部 第23回会合

議事次第<(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai23/23gijisidai.html)
議事録(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai23/23gijiroku.html)

茂木IT担当大臣から、e-Japan戦略U加速化パッケージのポイントについて説明があり、前回の資料では抜けていた『いつまでにだれが責任を持ってやるか』といった点も明白になりました。
e-文書イニシアティブは、IT規制改革の推進(D:Deregulation)の一環として位置付けられています。e-文書イニシアティブの実現を求める声として取り上げられた数値は、前回同様に税務書類の保管コスト(経団連の試算:3,000億円)です。これに対して、石原氏(東京海上火災保険会社代表取締役社長)から、『特に企業のコストの削減、あるいはITの利活用につながるように、電子保存の対象範囲はできるだけ広くとって頂きたい』と発言がありました。
なお、e-文書イニシアティブを含めIT規制改革の推進と、内閣府の設置された「総合規制改革会議」(2001年4月〜2004年3月、2004年4月以後は規制改革・民間開放推進会議)との連携についても言及されました。

●2004年 2月 6日:e-Japan戦略U加速化パッケージ

本文(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/040206honbun.html)

第23回会合終了後、e-Japan戦略U加速化パッケージが発表されました。これで、e-Japan戦略U並びにe-Japan重点計画-2003で取り上げられた様々な方策/施策の扱いは、横並び状態からメリハリが付いた状態に変わりました。発表された加速化パッケージの全体(AからF)を俯瞰してみましょう。ただし、Dについては、詳細に列記しておきます。

1.アジア等IT分野の国際戦略 (A:Asia)
2.セキュリティ(安全・安心)政策の強化(B:Block and Back-up:Security)

1)「IT社会を守る」(公共分野・重要インフラの情報セキュリティ強化と人的基盤の充実)
2)「ITで守る」(ITの活用による国民生活、社会・経済活動の安全・安心の確保)
3.コンテンツ政策の推進(C:Contents)
4.IT規制改革の推進(D:Deregulation)
1) e-文書イニシアティブ
・内閣官房及び関係府省
・2004年6月頃取りまとめ、それを元に早期にe-文書法を国会提出
2) これまでの制度のIT化と比べ、IT化が遅れている分野の早期規制改革
(1) 総会議決権行使の電子化
・内閣府及び法務省
・2005年度末を目標に、法制上の措置を講じる
(2) 対面による意見聴取等の電子化
・全府省
(3) 診療情報の電子化など医療分野でのIT利用促進
・厚生労働省
・2004年9月を目標に、方策をまとめる
3) 現実世界の制度とサイバースペース上の制度で整合等を図る必要のある規制改革
(1) 電子的手段による資格保有等証明の推進
・内閣官房、総務省、法務省、経済産業省及び関係府省
・2004年中を目標に、結論をまとめる
(2) 電子的手段による債権譲渡の推進
・総務省、法務省、経済産業省及び関係府省
・2004年中を目標に、結論をまとめる
5.評価(E:Evaluation)
6.電子政府・電子自治体の推進(F:Friendly e-government and e-local government)

e-Japan戦略Uを進めるためには、府省庁間の調整が必要です。そこで、最初に、利用者の視点から求められている施策をパッケージ化し、その上で関連する府省庁を束ねる方法を、加速化パッケージでは採っています。
更に、重点施策で省庁間の連携を強化させ戦略の進捗を加速させる(アクセスを踏む)方策を列記するだけではなく、e-Japan戦略Uの進捗具合を確認し必要に応じて見直す(路面に応じて運転する)ために、e-Japan戦略Uの時点から設置された「評価専門調査会」(第1回会合 2003年12月22日)の役割についても、加速化パッケージでは言及しています。 なお、評価専門調査会の議事録を見る限り、e-文書イニシアティブについて取り上げた様子(第12回会合 2004年12月24日現在)はありません。
どちらにせよ、DのIT規制改革の推進で取り上げられた施策の中では、一番最初に、e-文書イニシアティブがその実現を目指して、電子文書法の制定へ向けた取り組みが始まりました。次に、その全文を引用します。

『e-文書イニシアティブ法令により民間に保存が義務付けられている財務関係書類、税務関係書類等の文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、文書・帳票の内容、性格に応じた真実性・可視性等を確保しつつ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存が可能となるようにすることを、統一的な法律(通称「e-文書法」)の制定等により行うこととする。
このため、電子保存の容認の要件、対象範囲等について早急にとりまとめ、2004年6月頃を目途にIT戦略本部に報告を行い、法案を早期に国会に提出する。』
(内閣官房及び関係府省)

この文面から、e-文書イニシアティブや電子文書法における当初の対象を、"等"は付いていますが、財務関係書類や税務関係書類に絞って検討して行きたいとの意図が読み取れます。
e-Japan重点計画-2003の「民間保存文書の電子的保存の制度面・技術面の検討及び電子文書の長期保存の技術開発支援」(*1)ではそこまでの言及はありませんでした。

*1:e-Japan重点計画-2003の「U.先導的取り組みによるIT利活用の促進」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/ejapan2003/030808-2.html

(社)日本経済団体連合会(以下、経団連)の「2003年度日本経団連規制改革要望 ―さらなる規制改革の推進に向けて―」で、情報・通信分野で基本的方針として、『わが国産業の競争力強化および国民生活の質的向上に向け、経済社会活動の様々な分野でITを最大限に活用できるよう、情報通信の需給両面において改革を推進する必要がある。具体的には、〜略〜、行政手続の合理化・電子化などを進める必要がある。』(*2)とし、具体的には、
・税務書類の電子保存範囲の拡大
・税務書類の電子保存のための手続の改善
と要望していました。

*2:http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/098/kobetsu.html#10

e-文書イニシアティブの文面は、この経団連の要望に答えたものです。この要望書が公表されたのが2003年10月21日、それ以後のIT戦略本部の会合での議論もほぼこれに沿った方向で進んでいます。
なお、加速化パッケージでは、e-Japan重点計画-2003にあった電子文書に関する電子的保存の技術面の検討や長期保存の技術開発支援についての言及はありませんでした。どちらにせよ、スケジュールも明記され、法制面の見直しが始まった事実の方を、この時点においては評価すべきでしょう。
そして、政府のe-文書イニシアティブの動きを受けて、経済界が早速動き出しました。

◇2004年 3月 1日:(社)日本経済団体連合会:税務書類の電子保存範囲の拡大を改めて要望する

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/018.html

現在、税法では民間に対して7年間の"紙"の帳簿書類保存を義務付けています。1998年に成立した「電子帳簿保存法(*3)」によって、部分的に電子的な保存も認められています。

*3:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成10年3月31日法律第25号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO025.html

しかし、電子化が許容されているのは、
・「自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合」(電子帳簿保存法第4条)
・「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」(電子帳簿保存法第10条)
に限定されています。帳簿書類の大半を占める契約相手方が作成した"紙"による見積書、契約書、注文書、領収書などには同法は適用されません。このため、企業は"紙"による保存のために多大な費用が発生しています。この現状を捉え、経団連はこの意見書において、電子帳簿による保存を、紙で受領した書類をスキャナで読み取った電磁的記録にまで拡大するように求めました。
すなわち、経団連は、e-文書イニシアティブの対象を元々が"紙"の税務書類と絞り、電子文書法の早期制定を望んだのでした。同時に、技術的な課題はほぼ解決可能なレベルになったとして、経団連が考える技術的な仕様案についてもこの要望書で提示しています。

帳簿書類等の主な保存形態と容認の現状

◇2004年 3月 19日:内閣府 総合規制改革会議:規制改革・民間開放推進3か年計画

http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/040319/index.html

この計画においても、「民間保存文書の電子的保存の容認」は2003年度中に措置済として、統一的な法律(通称「e-文書法」)を2004年度に提出すると言い切っています。
2004年4月1日に、内閣官房の中に法案制定に向けた準備室が設置され、ここに至って、電子文書法の制定は規定の事実となりました。次の焦点は、徐々に、電子文書法の対象範囲と、スキャナやタイムスタンプの扱いなどの技術面へと移って行きました。

その3へ、続く。


・2004年 4月 5日:IT戦略本部 第24回会合
・2004年 5月20日:IT戦略本部 第25回会合
・2004年 6月15日:IT戦略本部 第26回会合
●2004年 6月15日:e-Japan重点計画-2004
・2004年 9月10日:IT戦略本部 第27回会合
☆2004年10月12日:電子文書法案、国会提出
☆2004年11月19日:第161回臨時国会:電子文書法成立

民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成16年法律第149号)
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成16年法律第150号)
☆2004年12月 1日:官報(号外第262号):電子文書法公布
・2004年12月 7日:IT戦略本部 第28回会合
☆2005年 1月31日:官報(号外第18号):電子帳簿保存法の改正に伴う財務省令の改正
☆2005年 1月31日:官報(号外第18号):電子帳簿保存法の改正に伴う国税庁告示

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